最初の職場は首都圏にありながら、山と海に囲まれた穏やかな農村地域での勤務でした。駅のある地域の中心部はロードサイドにお店が並んでいるものの、市街地から少し離れた田園地帯は夜になれば家もまばらで街灯も頼りなく、これが田舎なのだと実感したことがあります。
そうした田園地帯の真ん中に、一軒のお寿司屋さんがありました。一貫ずつの握りが大きく、ネタもしっかりしていますが、それ以上にシャリの存在感がすごい。田舎寿司というようで、他にも2店ぐらいあったような気がします。
あれから20年以上経過し、最近検索しても店の名前が出てきませんので、おそらく、店はたたんでしまったのだろうなと思います。店というのは、一人で切り盛りしている場合、だいたい、自分のライフサイクルにあわせて、閉店してしまうものです。人生の前半に出会ったお店は、行った回数は少ない店であっても、僕自身もまだ、心定まらず、経験の少ない時期の出会いなので、それなりにインパクトがあったように思います。
何か、不安を抱えながらも、未来に対する可能性を抱え、生きていた。結構、無駄な生き方もしていたように思いますが、それもまた、その時期、その時期の生き方であったように思います。ついこの間の出来事が、昨日のことのように抽斗から出てくるのは、何やら不思議な感触で、これは、自分の周囲に抽斗が無数にあり、そこを開くと、香りとなってその当時の思い出と自分の心の面持ちが感じられる、そんなところでしょうか。
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