一年あまり前に父が亡くなったのが実家の父の寝室であったこともあり、母にとっては父の最後を看取った、というか朝になって冷たくなっている父を発見した場所でもあるため、そのことを思い出す実家から離れたいということは、亡くなった当初から話していました。
とはいえ、実家はターミナル駅のすぐそばの分譲マンションであり、買い物その他に不自由することはなく、老後の暮らしをするにはこれ以上の場所はないと思います。じっさい、そうやって配偶者を亡くして一人になった人が何人も住んでいます。
亡くなった後しばらくは、父の名義になっていたさまざまな契約の名義変更とか解約に追われ、その後は銀行口座の解約に必要な相続手続き、最後には不動産名義の変更という大物もあって、そうした母の希望を聞いて、家探しをしている余裕はありませんでした。
今年の春になって何とか住まい探しを開始しましたが、当然ながら80を過ぎた母の一人暮らしの住まいを探しても、民間の場合は現在の住まいに見合う好条件の物件など借りられるはずはありません。このへん、母は好き勝手に希望を言いますが、ネットも使えない母は自分では動けないので、結局、自分が中心になり住まい探しをしている、会うたびにプレッシャーを受けることになりました。
何とかURであれば借りられるとの目途が立ちましたが、URはネットで検索してもほとんど空きがなく、これは相当待たないと、希望の物件を見つけるのは無理だなと思いました。ただ、たまたま営業センターに行ったら、希望の物件で空きが出たので、そこから弟と協力して何とか母を引っ越すことが先日できました。引っ越しというのはとても大変でストレスもたまるので、自分のことでも嫌なわけですが、実の母とはいえ他人の引越しを実質的に仕切るというのはすごく大変で、これはこれで相当なストレスになりました。
しかしながら、実際に引っ越してみると、当たり前ですが、80を過ぎて全く新しい環境というのは大変なわけです。順応力が落ちていますので、近所の店を覚えることからはじまります。ゴミ出しの手順もわからないですし、知り合いがいるわけではありません。引っ越し直後は何かが不足したり勝手が違ったりして、たちまち音を上げてしまいました。要するに引っ越したことを後悔しているわけです。
本人の希望を実現したのに後悔されるのは、あらゆる手順を整えた自分にしてみると理不尽極まりなく、これが他人であればさっさと見捨てて勝手にしろと言いたいところですが、実の母なのでそうもいかず、週末になるとあれこれとケアしており、電話も毎日のようにしています。正直、自分の生活で精一杯でそれどころでないわけですが、せめて、転んでもただでは起きないの精神で、それでも寄り添うことで、新たな発見とか、出会いとかを見出して行ければと考えています。
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