お酒との出会いと別れ

 僕は大学までは、お酒というものがほとんど飲めませんでした。ビールとワインは少し、焼酎や日本酒は全く飲めずといったところでしょうか。クラスのつながりはあまり強くなく、所属していたサークルが、いわば精神修養系で、アルコールからは距離を置くことを是としていたこともあり、実家暮らしで両親も家飲みするタイプではなかったので、お酒とは縁がなかったと言えるでしょう。

 大学卒業後、就職してから、そうした環境がガラリと変化しました。今は新入社員にそんなことをさせる会社も少なくなっただろうと思いますが、僕が就職したころは夜桜を愛でながらの宴会を職場全体で開催し、就職したその日から、近くの公園での花見の席取りを先輩数人とさせられました。その日は、夜桜見物をするには肌寒く、お燗機能付きの清酒缶が美味しかったのを覚えています。そういえば最近、お燗機能付きの清酒缶を見かけなくなったように思います。

 この、大学卒業後の最初の職場が、どちらかと言えば現業系で、皆さんお酒を実によく飲みました。僕もそういう環境で4年間過ごしたので、お酒全般が強くなり、ビールよりも日本酒と焼酎を愛好するようになりました。かなりの量を飲めるようになったので、酔っぱらって急性アル中で病院に運ばれたり、電車で寝過ごして終点まで行ってしまい、周囲のホテルは空いておらず、仕方なくホテルのフロントの方にお願いしてロビーに寝かせてもらったり、はたまた乗り過ごして慌てて降りた田舎の無人駅から酔った勢いで25キロも歩いたこともありました。こうした出来事が、若いころではなく、つい最近までやらかしていたのだから、我ながらしょうがない奴だと思います。ただ、こうしたお酒が飲めることでのコミュニケーションの深化ということは確かにあり、それは僕の仕事と、人間関係の幅を広げてもくれました。

 これが、別な投稿で書いたように、2019年の秋にPTSDを発症してからは、すっかり飲めなくなりました。それでも2020年のはじめぐらいまでは、少しはお酒を飲んでいましたが、ここ一年はビールを中ジョッキ1杯飲めば十分だし、最初からソフトドリンクでも全然構わなくなりました。家ではもちろん、完全ノンアル生活です。これは、発症直後に極度の不眠に陥り、それを解消してくれたのが睡眠導入剤でしたので、薬が効かなくなることへの恐れがあり、また、今は薬の助けも借りながら、精神的な安定もコントロールしており、以前のように自覚なく意識なく自分を統御できていたのとは、全然違うように感じています。こうした自身の状況に加え、コロナウィルス感染拡大で、そうした飲み会の機会が徹底的に少なくなったので、無理する必要がなくなったのも、大きいと思います。

 この先、お酒を再開するかと言われれば、今のところはその気はありません。僕の勤める職場は古い体質を引きずっており、上になるといろいろ付き合いもあるので、お酒は飲めた方が良いのでしょうが、夜もすっかり弱くなったので、二重な意味でそういう付き合いは難しくなっています。

 これまでの四半世紀に及ぶ社会人生活において、お酒が人生を豊かにしてくれたことは確かであり、そこは感謝したいと思いますが、これからは、お酒を離れ、素面な自分で新しい道を切り拓いていきたい。あるいは、そうした新たな僕の挑戦が軌道に乗れば、お酒に戻ってきてもらってもいいかなと思っていますが、今は迎えに行く時期ではないと思っています。

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