市立校舎の5

 国家の主権回復とか植民地からの脱却とかいうのは威勢が良いが、そのためには財政の自立が欠かせない。現状では今月の年金と公務員の給料の支払いさえままならない。政策審議委員の審査が終了し、はじめて関宿信用保証部は翌月の政府支払いの内容を審査し、必要最小限の支払いに限り保証を与える。与信結果は五月雨式に掲示板に張り出され、指定された時間に信用保証部庶務課の窓口に行き、信用保証部長の公印が押された公文書を受領し、その公文書によって財政再建国債の発行が認められる。ものすごい綱渡りで、超めんどくさい仕組みになっているが、これは「ありがたみ」を感じさせるのには必要なことと信用保証部は考えており、変えるつもりはない。他に金策のあてのない債務者というのは、唯一の債権者に大して絶対的に劣後する。打ち出の小槌のようにお金を借りられた時代があったらしいが、そういうのは世間では非常識であり、自転車操業を大掛かりにしたものに過ぎない。小難しい経済理論が通用するのは、政治的、軍事的に経済を支配している場合だけである。オレには政策審議委員をつとめる能力とか適性はないよなあと思うけど、裁判のように一人一人の人生が見透かせてしまうような息苦しさはない。困ったことになる人はいるんだろうけど、当たり前のように特権に浴してきた連中もいるだろうと思う政策もある。政治はからくりを知る者に対して甘く、無関心や無知な者にはわかりやすい些末なことに関心を向かわせて、本質のややこしさには迫らせないところがある。その結果、屋上屋を重ねていびつな既得権益維持の城をつくりあげて、みんなで城の中で道に迷っているうちに敵襲に会い、抜け出すことも戦うこともできずに敗北した。譬えとしてあんまりうまくないが、皆が城の全体像を理解していなかったのが、末期の本質であったのは確かだ。

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