午後10時

 最近は午後10時のデッドラインがなぜか厳格になっており、とにかく10時以降は何らの生産活動もできなくなっている。その分、翌朝の作業は生命線であり、勉強や物書き、もろもろの私用はここで済ませなければならない。安定と思えた島は沈みつつあり、いよいよ、僕は島を離れ、離陸をしなければならない時期に来ている。

 いろいろなものが色あせて見えているのもあるが、過去に僕が楽しいと思っていたことが、これから先はちっとも楽しくないと思っていることもある。端的な例は飲み会であり、僕はこうした社会状況になる前に、飲み会を必要としない、飲むことを欲しない体になったところ、それが許容される社会になり、すっかり身についてしまった。今さら引き返すことなどできない。僕の身体には、かつて浴びるほど日本酒を飲んだようなことは、昔話としては記憶されているけれど、それは子供時代に遊んだ思い出のようなもので、その頃を振り返り楽しむことはできるが、それを再現されても同じようにはできないだろう。

 たられば、というのはあまり意味がないが、もし、僕が2年前にこうした状況に変化しなかったら、何か別な道を歩んでいたのだろうか。僕のパラダイムシフトの直後に社会全体がパラダイムシフトしたので、延長線上の道ではあり得なかっただろう。外形的にはさほど違わなかったに違いない。ただ、内面ではおそらく出口が見いだせずに、何となく内面に漠とした不安を抱えつつ、でも体が許すので、組織のニーズに応えて仕事していたのだろう。今、自分なりに至っている出口戦略も決してバラ色とか、革命的とかいうわけではないが、少なくとも、希望は持てる。たとえ独りよがりであっても、賭けぐらいはできそうだ。

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