時間は特効薬にはなり得ないですが、記憶を風化させ、人が立ち直るために、確実に効く薬だと思います。嫌なことや辛い体験、悲しい出来事については、その後に禍(わざわい)そのものが幸せの種になるような、大逆転事がない限り、他に楽しいこと、喜べることがあったとしても、心の中に突き刺さった棘のような感じで、消えることがありません。逆に幸せな思い出や嬉しい出来事は、現状の辛さや寂しさを際立たせる、辛い思い出に転じてしまうことは容易です。こう考えると人生において楽しい時間よりも苦しい時間の方がどうしても多くなりがち、ということになってしまいます。人生において、程度の差こそあれ、様々な禍福は過去においてもありましたし、未来についても、現在の種まきによってある程度未来の結果を良い方向に持っていくことはできますが、それでも禍の方を無くすことはできないと思います。現在の幸せのストックの多さも、未来を保証するわけではありません。ただ、苦難に直面してもそこで立ち止まって恨みと呪いの毒を吐いていては、未来がますます暗いものになってしまうますので、そこは置いておいて、ほこりを叩いて立ち上がり、未来をより良くする種まきをするしかない。そういう時に種をまく手法を、落ち着いた時間を頂くうちに考えておくべきでしょうし、致命的な状況に陥らない限りは、苦難の只中でも未来への福徳の投資をしていくしかない。あとは時間が経てば、禍福いずれも混ざり合い、敢えて引っ張り出すことがなければ自分を傷めつけることもなくなりますし、苦しいけれど貴重な経験というところまで心持ちが至れば、消化できたといえるのでしょう。
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