伊豆諸島近海や富士山の火山活動の活発化に伴い、東京湾への安定航路の確保が困難になっていた。千葉県域の大部分を信託統治することになった瑞穂信用保証機構は自らの管理する千葉港、木更津港の安定運用のため、利根幕張運河整備構想を計画し、10年で暫定通水までこぎつけ、船舶の航行を可能にした。その工事は、利根川河口堰の上流部と下流部への閘門建設、河口堰から長門川を経て印旛沼に至る河道の拡幅と浚渫、印旛沼から東京湾に至る印旛放水路に新川閘門、花見川閘門を建設と河道の拡幅と浚渫を行う、かなり大がかりなものであったが、東京湾への安定航路の確保には大いに効果を発揮した。保証機構は千葉港と木更津港以外の東京湾内港湾利用船に対しても航路管理料を支払うことにより通航を認め、東国水利庁が航行管理料や運河区間の途中にある酒々井湊の港湾使用料を徴収していた。
東国水利庁には運河の管理とは別に、利根川水系の管理権も握っていた。保証機構が下流部の安全保障上、上流部のダムその他の水利施設の管理を強く主張し、最後は渋る政府に対して信用保証枠の縮小を材料に何とか呑ませたものであった。東国水利庁は利根川と幕張利根運河の共用区間である長門川との合流点の上流部に上流からの土砂流入を防ぐための水門を建設した。
東国水利庁は特定地方独立法人であり、保障機構の受託地方統治機関である千織自治政府と安是特別自治市、領外行政府「常葉国」の3者が出資して創設された組織である。このうち安是特別市だけがこの国の中央政府の統治下にあるが、特別自治市の権限は強く、中央政府が直接指示することはできない。むしろ、3者は連携して運河流域と常葉國の整備した流海国際自由区域における金融・経済機能の強化をはかることで、この国の最強経済圏の復活を目論んでいる。かつて下総と常陸の間にあった香取の海の周辺が東国最大の経済圏であったので、その復活こそが東国水利庁の目指すところである。もちろん、国際信用保証機構の絶対的権限なくしては進めることができず、そこは機構の権益、すなわちこの国の債務の円滑な償還に資する政策であることが前提となっている。今のところは信託統治地域の税収や各種収入を増やすことにつながっているので、東国水利庁の運営は一任されており、人事や予算についての介入は少ない。
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