このところは、自分の身の回りにあるものを見ると、「これは(あの日)より前に買ったのかな」と、大事な人が存命であったころの時空を切り取り、手元に引き寄せ、思いを致すようになっています。「あの日」の直後は、身の回りには大量にそうしたものがあったのですが、日が経つにつれて、鮮度が求められる食品関係はどんどん「あの日」以降のものに入れ替わっていき、「あの日」をまたぐものはよりスパンの長いものになっていきます。
ただ、故人の持ち物であったものは、「あの日」以降、出番がなくなり、「あの日」から変わらぬ場所に留まっています。それらの持ち物は、使えるものであれば、所有者を変えて活躍できる可能性を持っていますが、同時に、故人の部屋という特別な空間にあるが故に、存命であったころの時空を切り取った空間をそのまま閉じ込めておきたいという、周囲の人々の意向により、身動きできずにいます。多くは、そのまま過去の思い出となり、空間から取り出されることなくしばらく存在し、その後、周囲の人々が気持ちの区切りをせざるを得ないとなった時に、思い出空間の閉鎖と同時に、ものとしての役目を終えてしまうのでしょう。
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