毒の沼

 組織の中で、その対応のまずさに袋叩きにあっている部門がある場合、普通は、そのトップに問題があると考え、部門のトップを替えれば状況が改善すると考える。ただ、その部門は1年半以上、イレギュラーなトラブルへの対応を求められ続けており、通常の業務量も多いことを考えると、あまりに多くのことを組織内部からも外部からも求められて、考えるだけの力、動くだけの力が失われているとみることもできるのではないか。一種の学習性無力感というか、何をやっても怒られ、叩かれ続けたら、最後はなるべくやらずに済ます、という思考に陥ってしまうだろう。じっさい、この1年半、部門幹部が変わらなかったわけではなく、人的増強は続けられている。部門トップは変わっていないので、独裁的な人物であれば補佐役が変わろうと頑迷にやり方を変えないということもあり得るが、組織のトップの意向で補強された人事であり、ないがしろにはできないはずである。現状、うまくいっていないことで、旧来からいる部門トップの頑迷さにすべての不手際の責任を帰する見方もあるが、本当だろうか。組織が一種の毒の沼なのではないかと思う。誰がいってもうまくいかないし、果てなき毒の沼をあてどなく行軍する部隊を率いる幹部にどのような俊英をあてようが、皆で体力を費消し、どのような人であっても精神的に追い込まれてしまうだろう。なるべく、課題を切り離し、責任を一元化せず、毒の沼は長期戦と割り切り、あまり緻密なロードマップを描かずに、なるべく体力を温存する行軍とする。何がなんでも毒の沼の続く方向に歩き続け、その沼の果てを発見する必要はなく、近くの岸に上がり、別な道を歩んだ方が良い。対外的には最低限の取り繕いをして、内面では方針転換する、そういう余裕がある幹部を送り込まない限り、視野狭窄に陥った優秀な人たちは、皆で毒の沼を果てを求める旅をいつまでも続けなければと、考えてしまうかもしれない。

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