便利から自由に

 僕は便利であることで組織の中である程度、主体性を保ちながら生きていくことができた。入口段階で人付き合いを学び、酒を武器とすることで、さまざまな情報が集まり、情報は力になった。最初のころは、自分を崩して、自分の知らないことも知ったふりをして、嫌なことも我慢して、付き合うことが仕事だと思っていたが、どうもそれでは持たない。自分の個性の中で、もちろんすべてをさらけ出すことは得策ではないが、ある程度は自分の個性に引き寄せて語ることで、独自の立ち位置のようなものを確保することができた。自分一人でできる仕事のクオリティ確保も大事だか、結局は仕事のできる人との対等かつ良好な関係を築くことが、組織の中で仕事をする際に必要な掛け算の係数を上げることになる。自分の力×係数=成果であり、係数は各方面に増やすことで、自分がいかように進んでも短期間で成果を出せるようになっていた。

 ただ最近は、組織の中での対応に限界が来ている。自己実現と組織目標を同一視して、あまりに組織を使い倒す向きに疑問を覚えつつも、その係数の凄まじさに力添えをしてきたが、あきらかに組織が成果の出口を見失っている。中でボトルネックがあり、組織の中でさえ成果が出せないでいる。明らかに中で言い訳をするための作業であり、自己実現というより、自分はやってますとアピールするためのツールに成り下がっているのではないか。そんなことに多くの人を巻き込みエネルギーを費消している場合ではないのでは、と思うことがある。外に出て何ができるかわからないし、そこは魑魅魍魎の世界かもしれない。とはいえ現状は、大海原のど真ん中で沈みゆく船のようなもので、とにかく外にでないと巻き込まれてしまう。船の中でいくら褒められても勲章もらっても関係ない。今こそ便利な世界を捨てて、自由に向かい、その自由の厳しさに耐えられる力を手に入れるべき。ただ、自分一人の力だけではあまりに頼りない。それは現実。外に出て、何とかコネクテッドする。自分の力×つながる係数によって、自由な世界で成果を出し続けていきたい。これまでのフォームも無駄にはならないはずである。僕と、僕にとって大事な人をすくい、夢を与えるものを、僕自身がまずは紡いでいこう。そのはじまりの苦しみこそが、毎日の思索と行動である。

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