僕のように、トラウマになる圧倒的な出来事により心的外傷を受けた患者について、1か月未満で症状が消失する場合は急性ストレス障害(ASD)とされますが、症状が1か月を超えて持続する場合は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されるようです。ただ、PTSDは診断基準として「実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事」への反応であることが前提とされているため、そうした出来事によらず心的外傷を受けて症状が持続する場合は、PTSDとは診断されないようです。
ただ、現実として、僕の場合は1か月を超えて食欲不振と不眠が続いていたので、便宜的にはPTSD的なものとして、周囲の人には説明していました。今も完全回復したかと問われれば、8割回復していますが、従前の状態に戻るのは時間がかかりそうです、と答えています。睡眠導入剤なしには眠りに入れませんし、日によって、よく眠れないときと、比較的眠れるとき、朝起きた時に気分の良くないときがあり、安定していないなと思うからです。一度、周囲との信頼関係がすべて崩れた経験を持つと、そのダメージはことのほか大きいと、自分なりに感じています。
もちろん、戦場に行った方や、性的被害を受けた方に比べると、その傷の深さは大したことがないのかもしれませんが、だからといって自分の傷をなかったことにできるほど、軽いものではない。診断基準にあてはまらなくても、自分にとっては当面、場合によっては一生涯、向き合うことになるのかなと覚悟しています。メンタルの症状については、自分にしかわからない面もあり、他者の症状もうかがい知ることができない。症状とどのように付き合い、個々の人生の文脈にどのように位置づけるかも人それぞれだと思います。このへんは、おそらく心的外傷を受けた経験のない人にとっては、どうにもわからないところであり、ただ、メンタルになればうつ状態とか適応障害とか、それなりの診断が出されるので、それにより、わかったふりをするしかないのだろうなと思います。お医者さんでも、心的外傷の多様な類型について理解されている方はそんなに多くないと思いますので、素人である職場の上司とか同僚、家族、友人が、非典型的な心的外傷を理解するのはより難しいと思います。そうした無理解により、なかなか立ち上がるきっかけを見出せない人も少なくないと感じます。僕は、主治医の的確な診断により、早期に自己の症状を、自分なりに理解し、受け入れ、立ち上がって歩むことができるようになりましたので、メンタル面で、明快な説明が難しい多様な症状に陥り、悩んでいる人の気持ちに寄り添い、立ち上がり歩みはじめようとする人のお手伝いができる、そういう人間になりたいと思っています。
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