睡眠導入剤の支配を受容する

 僕は2019年の秋にメンタル面でダメージを受けるまでは、夜、眠りに入ることに支障を感じたことはなく、いわゆる睡眠薬に対しては、大量服用すると人体に悪影響を与えるという漠然とした認識があり、自分には無縁なものと思っていました。

 ただ、急性ストレス障害になって、夜中に眠れない状態に陥ると、心が暴走している状態で、とんでもないことを思いついて(その渦中にあると、それこそが解決に至る唯一の道、至極まっとうな考えで、なぜそこに皆が思い至らないのかという苛立ちと怒りを抱えているのですが)、メールにとんでもないことを書いてしまうんですよね。柄の外れた全身ナイフを握るようなもので、相手も傷つけますが、自分も傷つく。今から見返すと、それによって人を動かし、事態を動かした面もあったのは確かなので、それがまったくの迷惑行為であったとは言えないのですが、正常な精神状態ではとても送ることのできるメールではないですね。

 このへんは、自分のメンタルに波があり、少し落ち着いた局面で冷静に考え、早くクリニックに行き、主治医より、暴走状態の自分の心を落ち着かせる、いわば「ストンと落ちる」ような説明を受け、それに基づく適切な診断をいただき、それによって多くの人に説明可能なツールを手に入れ、自分の中で起きた事象の整合性を図ることで、ある種自爆的な暴走状態も改善されるに至りました。そしてそこではじめて処方されたのが睡眠導入剤です。最初のうちは、まだまだエンジンが過熱してましたので、焼け石に水といった感じで不眠状態は改善されず、むしろ非常事態から日常に戻ってきたことで、自分が本来いるべき場所にいないことに気づかされ混乱し、一時的に悪化したこともありましたが、次第にエンジンもクールダウンして、傷ついて動けない自分の現実を受容できるようになり、少しずつ睡眠導入剤の効果が浸透していくようになりました。この睡眠導入剤自体は、それほど強力ではないのですが、たまに服用しないといつまでも眠れない、そこでフラッシュバックが引き起こされることで、自分の中にあるスイッチを切り替える作用があると、僕の心と体が理解するようになったんですよね。もちろん、僕には睡眠導入剤が作用する仕組みを医学的に理解しているわけではありませんが、僕の中の解釈として、そのように理解することで、睡眠導入剤に対する敬意のようなものが芽生え、その作用を減殺するアルコールに対する拒絶感が強まりました。そういう意味で、睡眠導入剤は僕を支配しているといっても過言ではありません。睡眠導入剤をいつまでも続けることについては、賛否両論があるようですが、発症から一年を経ても、睡眠導入剤なしには夜通し眠れない状態が続いていますし、主治医は今の程度の睡眠導入剤を服用し続けることについては、特に問題ないとの見解ですので、日常生活を支障なく営む上で、一つの習慣として、睡眠導入剤とは無理に離れようとせず、その支配を受容して生きていきたいと思います。そこから離れるのは、自分の持つ多様な属性を、新たな器に統合したときでしょうか。

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